立命館大学トライアスロン部は、2016年にこれまでの活動を認められ、体育会のトライアスロン部として部活動に昇格した。それまでにも同好会という位置づけながら、2005年に個人優勝、2011年には日本学生トライアスロン選手権(以下、インカレ)全国優勝など多くの実績を残している。第二部では、古郷康介監督と岩井悠二選手との対談を通して、立命館大学トライアスロン部の目指す未来を伺う。岩井選手は日本トライアスロン連合ジュニア強化指定選手に選出されており、2020年度に立命館大学へ入学した。入学時にすでに、U19カテゴリーで日本人5位となっており、今後の活躍に期待がかかる。

「欲張りですけど、競技面でも組織としても、より良い誰もが憧れる、それでいて選手たちが応援してもらえる部活にしたいと思っています。選手にはいろんな人に応援してもらえるような存在であって欲しいと思います。漠然とはしているんですけど、敢えて漠然とさせていて。自分たちでどういう風にしていけば、応援される選手、組織になれるのかっていうところも込みで一緒に考えて欲しいなと思っています。」

チーム一丸となって勝利を目指す

古郷監督:うちの岩井です。彼はジュニアの時からトライアスロンをやってきています。今まで疋田浩気コーチのもとで指導を受けてきました。疋田コーチは有名な方で、私が学生の頃には日本選手権で活躍していたトップ選手に向かって、「おい!いけ!」っと喝を飛ばしていて、「おお、怖い人だな」と思った記憶があります。そのコーチのところからきてくれているんで、今の環境はギャップがあるんだろうなと思っています。

岩井選手:そうですね。でも疋田コーチは基本的にはレースの時にしか吠えたりしなくて、割と自由にやらせてくれるし、レースに直接つながる指導をしてくれてたなと思います。

岩井悠二選手

――立命館大学での練習はどうですか?

古郷監督:コロナ禍の影響で、自粛期間中の練習は止まっていたので、自主練習という形で各自が練習していました。去年の4月から7月の頭くらいは全体で練習することは全くありませんでした。なので入ってきたばかりの時に、一回あったくらいかな?

岩井選手:一番最初だけですね。

古郷監督:一番最初の1日だけ練習に来て、その後は全体練習なしになってしまったので、本当にかわいそうで。今年は、新入部員に経験者が3名と、それ以外に7名入ってくれました。経験者には声掛けをさせてもらってたんですけど、彼は一般入試で急に来てくれたんです。もちろん名前は知ってましたし、活躍してるなっていう印象はあったんですけど、まさかウチに来るとはっていうのがあったんで嬉しかったです。

――それは今後が楽しみですね。練習はどのような雰囲気でやっていますか?

古郷監督:うちはメリハリをつけてやるのがモットーで、そこは1回生でもわかってくれてるかなと思います。練習はハードに、ふざける時もハードに(笑)。びっくりするよな、先輩らな。

岩井選手:そうですね。基本ふざけてますね(笑)。

古郷監督:練習が始まるまでスイッチが入らないんで、彼がジュニアでやってきた環境とは違うと思います。

岩井選手:でも、結構近いですよ。疋田コーチの練習って本当にずっと喋ってて、練習の時だけ、ぱっとやってという感じだったので。それが結局、効率的だったのかなと思います。

古郷監督:じゃあ、すごいウチと合ってるんやね。トライアスロンは、どうしたってしんどいスポーツであることには変わりはないので、だらだらせずにやるときはガッとやったほうがいいんです。練習も割とキツめのメニューを作っているので、そのほかの部分は明るく楽しくやって欲しいなと思います。反面、練習でふざけてたら怪我につながるので、そういうところはちゃんとスイッチ入れ替えてやって欲しいとは言っています。

――普段はどれくらいの練習量をされますか?

古郷監督:月曜日は完全オフにしています。全体練習が火曜日と木曜日、キャンパスによっては金曜日も。あと土日ですね。その日によってやることは大体決めていて、授業がない時にはお互い声を掛け合ってバイク行ったり、スイムやったり。夏場は琵琶湖のほうに泳ぎに行けるので、いい環境だと思います。

――オフタイムの練習は生徒が自主的にやっているんですか?

古郷監督:そうですね。私たちはベースを提示しているだけです。あとは本当にやる気満々なので、声を掛け合っているみたいです。オフの日にもバイク乗ってるよな?

岩井選手:この間は先輩に誘われて10時から授業があるのに、7時くらいから2時間乗ってきました。

――すごいですね。それで授業出るんですか。

岩井選手:すごく大変でした。

古郷監督:立命館大学の学生が大変やなと思うのは、単位が取れてないとレースに出せないっていうのが体育会全体の決まりになっていることです。授業もでなあかんし、練習もあるし大変やなとは思いますね。

――両立のコツはありますか?

岩井選手:出た課題はすぐにやるようにしています。練習の間に出来るような課題はササッとやったり、時間がかかりそうな課題はオフの月曜日に回したりしています。

古郷監督:優秀やな。彼はスポーツ健康科学部っていう、比較的忙しい学部なので、自分でマネジメントしながらうまくこなしてくれていると思います。

岩井選手:でも自分で興味のあることなんで、頑張れますよ。

――スポーツ健康科学部とは、どういった勉強内容ですか?

岩井選手:スポーツに関することや、トレーニング方法です。どういうトレーニングをしたら体力が向上するかを、今まではコーチに言われたままにやってたんですけど、今は練習の意図がだんだん分かるようになって、自分でも練習を作れるようになってきているなと思います。

古郷監督:学生の方が詳しいこともありますよ。自分が知ってたことが一時代前になっていて、「それ、違いますよ」とか平気で言われるんで。逆にこっちも勉強し続けないといけないなって思います。

――その辺りは結構フランクに話されるんですね。

古郷監督:なるべく壁はなくしたいと思っています。彼が来た初日の時かな、ちょっと戸惑ってたんです。すごく緊張していてガチガチで来て、大学の監督ってもっと怖いと思ってましたって。でも二日目くらいからはもう慣れてたもんな?

岩井選手:監督や先輩のフォローもあったからです(笑)。

――練習以外の時はどのような雰囲気なんですか?

岩井選手:写真撮るの好きですよね、ウチの部は。

古郷監督:好きやな。本当に今時やなと思うんですけど、気づいたらインスタに練習風景が上がってたりします。

岩井選手:インスタのストーリーとか見ると結構いい雰囲気で練習してますよね。

古郷監督:マネージャーさんが雰囲気のいい写真をきちんとあげてくれてます。仲良いなと思いますね。誕生日プレゼントあげたりしてたよね。

岩井選手:そうですね。10月の誕生日の人が集まって、マネージャーが誕生日会やってました。

古郷監督:部内に10月生まれが多いからやと思うんですけど、マネージャーが自分の家に招待したみたいです。本当に料理のうまい子がいて、いろんな子を呼んで料理を振る舞ってますね。

岩井選手:めっちゃ美味しそうでしたね。10月生まれがよかったです(笑)。

――なかなかそこまでできないですよね。

古郷監督:八丈島出身で民宿をやっていたんで、大皿料理が得意みたいですね。量も本当に適切ですよ。今年から、遠隔ですが別の大学にいた同期が栄養士として手伝ってくれていて、栄養の相談もできるようにしています。ただ学生からは、コンビニとかにいくと報告しづらいって言っていてちょっと迷いが出てたんで、そこはこれから改善していかないとって思っています。

――では、きっちり報告して栄養士の意見を交えながら、体を作っていけるシステムなんですね。

古郷監督:そういうところまで行ければベストかなと思っています。でもそれが妙なプレッシャーになっているみたいで。こちらとしては外食したとか、バイクの練習中で補給食しか食べてませんっていうの含めて、そのまま出して欲しいんですけど、出すんやったらちゃんとしないと、と思ってるみたいで、実際は全部自炊であげてきてました。そこまでせんくていいのにと思って(笑)。みんな自炊やったもんな?

岩井選手:みんな自炊でしたね、怖かったです(笑)。あの時はコロナ禍で時間あったのもあると思いますけど。

古郷監督:人数も多くなってきて、トレーナー1人、栄養士も1人、監督も1人やし、スイムコーチもバイクコーチも1人ずつなんで、学生がうまく使ってくれたらいいなと思います。積極的にやる子ほどうまく使ってやってくれているみたいです。ただ、スイムコーチからは気になる子には連絡しているっていう報告も来ています。

――どんな連絡が来るんですか?

岩井選手:大学入ってスイムの調子が上がってないみたいだけど、どう?って聞いてくれて、入水がうまくいかない相談をしたら、アドバイスを分かりやすくくれました。とりあえずインカレまではそのままのフォームで、それが終わったら一緒に考えていこうって言ってくれてます。

古郷監督:インカレのあとはベースを作る期間に入るので、しっかり見直しをできるいい機会かなと思います。一回生でこれから成長が期待できますね。彼は自分で考えてくれてるのが一番いいですよ。全く自分で考えられない選手だと、うちの環境だと伸びないと思うんですよね。私はフルタイムの講師ではないですし、自分で考えるところがベースなので。

――ご自身で考えて作っていくという環境はどうですか?

岩井選手:今までは疋田コーチに見てもらってたんですけど、その時はすごいガツガツやらせてくれる感じでしたが、余裕もない感じでした。今は自分で考えてできるので、リカバリーが必要だなと思った時に自由にリカバリーを取れたり、今この力が自分に足りないから、こういう練習をしないとってなったら相談できる環境もありますし、自分で時間を作ってやれたりもするので、個人的には伸びやすい環境にいるのかなと思っています。

――岩井選手の活躍が楽しみですね。

古郷監督:そうですね。高校生の時の岩井の課題やなと思っていたのが、バイクでした。死にそうな顔して集団の半分より後ろにいたんですけど、うちきてからバイク強くなりましたね。2020年10月のU19では積極的にいくどころか、同じパックの中にいる選手に声かけてるような場面も見れました。今までの岩井しか知らない選手からすると、どうやったらこんなことになるんやろうって不思議がられてたんじゃないかな。

――それは大学の環境があったからこそですか?

岩井選手:そうですね。今まではバイクの練習ができる人がチームにいなかったので、1人でやることが多かったんですけど、立命館ってバイクがすごく強いですよね。

古郷監督:脚力だけは全国の大学生トライアスロンの中で平均するとトップレベルではあるので、引きずり倒されているのはあるのかなと。

岩井選手:そこに関しては自分でなんかやったというわけではなくて、先輩にとにかく食らいついたという感じですね。

古郷監督:ありがたいことにちゃんと食らいついていってくれたんで、それが一番ちゃんと伸びた要因だと思います。逆に同級生が増えてきた中で、今度は引っ張る側でもあります。もしかしたらそれを脅かすような選手が出てくるかもしれないですし。

――岩井選手には今、部内でライバルになる選手や目標にしている選手はいますか?

岩井選手:個人的にはトライアスロンはこの部活でもトップでやれる自信はあるんですけど、各種目で練習した時に絶対勝てないっていう人はいるので、その人たちにちょっとでも近づけるように練習の時にアドバイスを聞いたり、練習で食らいついたりとか、そういうことができる環境だなと思います。

――自分から積極的に聞きに行ったり、意欲的ですね。

岩井選手:先輩との壁がほぼないので(笑)。

古郷監督:選手には強い子が入ってきたら先輩の方からも聞きに行けって言っているんです。今年は特に競泳出身者が多い年なので、先輩からフォームを聞くように言っています。逆に聞かれれば人って教えたくなりますし、他の種目のことは聞きやすくもなるかなというのもあって、先輩たちがうまくやってくれています。文化が醸成されてきているなと思いますね。

――今後、取り組みたいことを教えてください。

古郷監督:今後は国際大会への参加が期待できる選手もいます。今の3回生にもジュニアの世界選手権に行ったり、アジアチャンピオンになった子もいて、そういう子が海外に遠征した時に文化の違いで苦戦しないようなケアをしたいと思います。レベルが高くなればなるほど、配慮しなければいけないことが多くなります。ハンドサインにも違いがあったり、ローテの向きも違ったりとか。海外の環境への適応力をトライアスロン部を通じて身につけていってほしいです。それは卒業してから社会人になっても、環境の変化に適応できるような対応力だったり、3種目バランスよく練習するためにマネジメントする能力に繋がると思います。

アジア選手権で活躍する選手も在籍している

――最後に今後の目標を教えてください。

古郷監督:日本で一番いい部活にしたいなと思っています。競技面で強くなるのは当然、目指していかないといけないと思っているんですけど、それだけではなくて。トライアスロンは個人種目でもありチームでもあるので、一人ひとりが成長し続けられる部活にしたいと思います。それは選手だけじゃなくて、マネージャーもマネージメントできるマネージャーであって欲しいなと思います。今は基礎的なデータ計測もしっかりしてくれているんですが、そう言うところよりもむしろ、選手が伸び悩んでいるのを事前に見つけたり、選手の管理の部分まで大学生としてやってくれたらと思います。それぞれに長所や短所がありますが、立命館大学にはそれを活かせられる環境がありますので。

例えば、選手でもトレーナーをやってみたいって言う子がいてもいいですし、アナリストやデータサイエンティストっていう職業がある中で、情報系のデータを扱うのが好きな学生がデータを取るための仕組みを作ってくれてもいいです。もっと競技以外でも自分たちの長所を出してくれたらいいなと思います。写真をいっぱい取ってるインスタグラマーみたいな子や、インフルエンサーみたいな子たちがいるんだったら、SNSを活用して広報活動をやってもらって、将来広告会社に行っても面白いですね。なので自分たちで特徴を出していって、私が監督の立場で想像していないような成長を自立的に、持続的にしていくような団体になると日本一ですね。プロだとそこまで悠長にやってられないですし、高校生だとそこまで考えさせるよりも手前に教えないといけないことがあったりするので、大学の部活動としての理想系を追っているような形ですけどね。

コロナ禍により各地でレースや大会が中止となっている中、立命館大学トライアスロン部の学生は練習に励み、出来ることを努力していた。トライアスロン部には競技面だけでなく、考え方や取り組み方も含めて成長できる環境があると感じた。自分で考えて答えを出すことで、どのような状況になっても前を向いて成長していける学生が逞しく感じた。