国際大会が行われ、世界中の選手が切磋琢磨しスピードを競う迫力満点のパラサイクリング。選手は細かくクラス分けされ、それぞれの特性に合わせてテクニックを磨き、競い合っている。ナショナルチームで監督を務め、日本パラサイクリング連盟の専務理事を勤める権丈泰巳氏にパラサイクリングの魅力を伺う。

どんな障害の人でも自転車に乗れる

――先日の東京パラリンピックの自転車競技では金メダルを獲得した杉浦佳子選手の活躍が印象的でした。杉浦選手との出会いを教えてください。
2016年に自転車関係の知人から紹介されました。最初は歩くこともうまくできていない印象でしたが、自転車には乗れたので早いうちに世界チャンピオンになると思いました。

――どのような選手が競技に参加していますか?
視覚障がい、脳性麻痺、切断や麻痺など運動機能障害がある方です。パラサイクリングは4つの自転車を使って必ず自転車に乗れますので、競技はどなたでも参加できます。ただ極力、パラサイクリングだけのレースを開催するのではなく一般のホビーレースなどに参加するように進めています。

――自転車はどのようなものを使用しますか?
通常の二輪車、三輪のトライシクル、二人乗りのタンデム、手漕ぎ式のハンドサイクルの4種類です。アメリカ、イギリス、オーストラリア、ドイツ、オランダなど欧米では盛んで国によっても特徴があります。タンデムはチェコやアメリカ、トライシクルはイギリス、ハンドサイクルはイタリア、アメリカが盛んですね。

――日本との違いはありますか?
ヨーロッパは世界的なレースが開催されるなど、そもそもの自転車文化の違いは大きいです。また障がい者スポーツへの理解などもヨーロッパやアメリカでは進んでいることも大きな違いですね。

――パラサイクリングの面白さはどこだと思いますか?
障がい者の方でも健常者に勝てる競技だということです。また障がいを抱えた人も含めて、自転車に乗れないと諦めている人は多いのですが、パラサイクリングは4つの自転車の使って必ず自転車に乗れます。自転車に乗れる喜びを共感できるところが魅力です。

――パラサイクリングに参加することはできますか?
自転車に乗りたいという気持ちがあれば誰でも参加できます。近くに障がいを持った人がいれば、声をかけて一緒にサイクリングに行ってみてください。
タンデムは二人で乗る自転車なので声を掛け合ったり、一緒に自転車に乗る気持ちよさを感じられたりと、最強のコミュニケーションツールです。

監督としての考えること

――パラサイクリングと出会ったきっかけはなんですか?
大学時代に日本障害者自転車協会の活動の手伝いがきっかけでした。視覚障がい者の方をタンデム自転車の後ろに乗せて走る「タンデムを楽しむ会」に参加していました。

――現在はナショナルチームのコーチをされていますよね。
2003年当時は障がい者自転車競技のサポートスタッフはほとんどが福祉関係の方でした。自転車競技の経験者が少なく、専門的な指導をするために協会から声をかけていただきました。その年のヨーロッパ選手権でチェコにスタッフとして帯同したところから始まりました。

――コーチ就任時には戸惑いなどはありましたか?
障害者の方へのコーチというのはほとんどありませんでしたが、自転車という機材を使うということは障がい者も健常者も一緒で戸惑いはありませんでした。ただ様々な障がいについては理解する必要があるので勉強はしました。

――監督に就任したことで気持ちの変化はありましたか?
障がい者の方への見方が変わり、厳しく指導するようになりました。障がいがあることで、できないことへの不満から投げやりになったり、周囲のサポートを当然と感じてしまい、素直さや感謝の気持ちなど大切なことを失ってしまうこともあると感じました。だからこそ、厳しく指導して皆さんに「応援される選手」になってもらいたいと思っています。

権丈監督のこれから

――今後の目標を教えてください。
最終的な夢は、パラサイクリングのグローバルチームを作ることです。まだたくさんの壁がありますが、実現するためには諦めずにチャレンジをして、思いついたことはすぐに行動にうつすようにしています。

――「Cycle Smile Japan」プロジェクトを企画されていると伺いました。
自転車を使い多くの人に笑顔と健康を提供することを目的としたプロジェクトです。自転車に乗ったことがない人を集めて、自転車に乗ってみるという企画などをしています。2022年からは全国で初心者向けのイベントを企画していて、自転車で笑顔の輪を広げることを目標に活動しています。

――夢の実現に向けて、今取り組んでいることを教えてください。
全国の地域ごとに拠点を作ることです。今は福島県いわき市にある日本パラサイクリング連盟の事務所を拠点に活動していますが、全国に拠点を持って普及活動を行いたいと思っています。今はまだ環境が整っていないところもあり、いつでも、どこでも、誰でも自転車に乗れるような環境が整備できるようにしたいです。