自身もロードバイクを趣味として乗りながら、サイクルウェアブランドのプロデュースやサイクルショップの立ち上げ、イベントMCやライドツアーガイドなど、輪界で幅広く活躍する内藤英未氏。マルチな才能の源はなにか?ご本人にお話を伺う。

――ブランドプロデュースやショップ経営など、様々な方面で活躍されていますが本業は何になるのですか?

もともとイベントMC業が本業で、自転車に限らず展示会やスポーツイベントのMCやナレーターをしています。それがコロナ禍がきっかけでイベントがとにかくなくなってしまって…。何をしようかな、と思っていた時にメンズウェア「HORIZONTAL」のプロデューサーに女性ウェアブランドを姉妹ブランドとしてやりませんか?ってお声かけいただいたのがきっかけで、ブランドのプロデュースをやることになったんです。

――コロナ禍がきっかけだったんですね。

それまでも趣味で始めた自転車が徐々に仕事になりつつあって、サイクルイベントにMCで呼ばれたり、ショップのアンバサダーをさせてもらったりしていました。「ロードバイク女子」っていうワードでいろんな人に認知してもらうことができたんですけど、自分が趣味として乗っていく中で、女性にはハードルが高いんだろうな。と思うことがよくありました。特にウェアは最初は抵抗がある人が多いだろうし、可愛いものが少ないなと思うことがたくさんあったんです。それでウェアのお声かけをいただいた時に、自分がやりたかったことが叶うんじゃないかと思ってお受けしました。

――経験なくプロデュースするのは大変じゃなかったですか?

ウェアを作り出してちょうど1年くらいなんですけど、まだまだ分からないことがたくさんあって大変です。デザインのやり方も一から勉強して、工場の手配や価格設定、ブランド名を決めたりホームページを作ったり、全部が初めてで手探りで進めています。

――内藤さんのプロデュースするブランド「Milibera.」にはどういう意味が込められているんですか?

ロゴマークは多方面に向かう道をイメージしています。自転車の楽しみ方は人それぞれで、サイクリングしたり、スポーツとして楽しんだり、エクササイズ目的の人もいます。ウェアに関しても街乗りスタイルでカジュアルなものや、空気抵抗を減らしたレーススタイルなど、選べる道はたくさんあるんだよっていうことが伝えたくて、このマークにしました。

――ウェアのデザインはシンプルな印象ですが、こだわりを教えてください。

こだわりは「大人可愛い」ですね。今までのサイクルウェアはスポーティーで、どこかレーシーなイメージが皆さんにあると思うんです。ピチッとしたパンツにメーカーやスポンサーのロゴが入っていて。でもそういうデザインに抵抗がある人もいると思うんです。「Milibera.」は私服としても違和感のないデザインに、ボタニカルなモチーフをあしらって女性らしいウェアを目指しています。

――サイクルウェアとして形状にもこだわられていますよね?

私自身、アパレルは初めてですがHORIZONTALのノウハウを教えてもらっています。縫製の仕方やライドスタイルに合わせた形状など自転車ウェアとしての機能はしっかりとしています。あと女性は体型にコンプレックスがあってピチッとしたウェアに抵抗がある人って多いんです。私自身、ロードバイクを始めた時は、何を着たらいいか分からずにすごく困っていました。特にお尻が見えるのが嫌というのが一番多くて最初はショートパンツやスカート履いている人もいます。でも、ウェア面でスポーツバイク入門のハードルを上げたくないなと思ってブランドではスカートも作っています。そのままの格好でおしゃれなカフェに行っても浮かないようなデザインで今後も作っていきます。

――デザインはデザイナーと打ち合わせて仕上げるんですか?

いえ、私がデザインしています。最初は手探りでしたが、ソフトの使い方から勉強しました。

――すごくマルチな才能ですね。お店のプロデュースもされてますよね?

プロデュースというか…、今までの自転車ショップは女性スタッフが少なかったりもするので、お店のオーナーから女性目線を取り入れたいので協力してほしいとオファーをいただきました。オーナーとはサイクルイベントでもお世話になっていて、新しく奈良でショップを始めるタイミングで参加させてもらっています。

――どういったことをアドバイスされているんですか?

ウェアと一緒で、こんな自転車ショップがあったらいいのにっていう願望が結構あったんです。それを全部取り入れてもらいました。自転車のショップって、自転車やパーツがずらっと並んでいて、男性メカニックがいて、「自転車を買うぞ」っていう目的がないと女性一人では入りにくい雰囲気があるじゃないですか。それを女性一人でもふらっと入れるような雰囲気で、地域のランドマーク的な場所になるお店にしたいと思って作っています。入り口を入ってすぐはアパレルが並んでいて、テラスには植物がたくさんあって、外で自分の自転車を見ながらカフェしてもらえるところもあります。メニューにも美容や健康に注目したものを取り入れました。私もショップにいるので、これからは女子ライドイベントも企画できたらいいなと思っています。

お店では水素水も提供され、美容と健康が意識されている

――それは楽しみですね。外観もインテリアも本当にカフェみたいな雰囲気なのがいいですよね。

女性が集まる場所にしてもらえたらいいかな。サイクリストじゃない人もふらっと入ってきてほしいし、ここでお茶しているうちにスポーツバイクに興味を持って購入してもらうのもいいんじゃないかなと思います。

――自転車のラインナップもシックなカラーモデルが多いですよね。

自転車のブランドは「Cannondale」「Cervelo」「Chapter2」「Winspace」。関西でも取り扱いが珍しいブランドも取り扱っています。街乗り用のクロスバイクからロードバイク、グラベルバイク、電動のe-バイクまでお客様のスタイルに合わせてお選びいただけるこだわりのラインナップになっています。

“アレグレの森”敷地内に店舗を構える。チョコレートショップ“わくむすび”、ポーランド陶器店が並んでおり、敷地内は穏やかな森のような空気感。
敷地内には洗車スペースも用意されている

――これからチャレンジしてみたいことを教えてください。

やりたいことだらけで何から手をつけたらいいか分からないくらい、たくさんあるんですけど、まずはイベントですね。お店を知ってもらえるようなイベントをやりたいです。

――それは一緒にライドするようなサイクルイベントですか?

そうですね。普段からサイクリングを楽しんでいる人はもちろん、初めて乗る人にスポーツバイクの良さを知ってもらうためのイベント、あとは女性にも来てもらいやすいようにショップでやっている水素メニューやマッサージを取り入れたイベントもやりたいです。

他にも、これは「あるある」なんですけど、女性がスポーツバイクを始めて何かあった時に一人で対応できる力って男性に比べるとあまり無かったりするんですよね。本当はパンク修理とかタイヤ交換ぐらいは一人でできた方がいいんですけど。グループライドやったら一緒の人が助けてくれたりしますけど、それじゃいつまでも自立できないじゃんってことを私は大きな声で言いたいです。だから、自転車をばらして輪行バックに収納する輪行講座や、パンク修理を一人でできるようにする講座もやりたいです。女性同士でワーキャー言いながら楽しく勉強できたらいいなと思っています。

――内藤さんはプライベートでも奈良のあたりはよく走っているんですか?

地元なのでよく走ります。奈良はサイクリング向けのコースがたくさんあるんです。山が多くていい峠がたくさんありますし、山に入れば信号も少ないです。奈良は奈良時代からの歴史があるので文化財を見ながらその歴史を感じるコースとか、南の方は緑も綺麗で車も少なくてめちゃくちゃ走りやすいコースもあります。お店に近くには柳生街道があって、そこには一刀石っていう鬼滅の刃で流行った刀で両断されたような岩があるお寺があったり、奈良公園の若草山の頂上から見る夜景もとても綺麗ですよ。たくさんあるのでお店でコース紹介したり、1泊くらいでツアーもできたらいいなと思っています。

――どんなコースがおすすめですか?

奈良は今、ホテルも充実してきているので泊まりできてほしいです。1日目は奈良市内を中心にサイクリングしながら観光してもらって、2日目は南の方に行ってほしいです。明日香村あたりは市内中心部から40kmくらいで、古墳があって緑も綺麗なので是非行ってみてください。明日香村はレンタサイクルもしているので電車で行って自転車で散策することもできます。

――ショップ以外にも新しくやってみたいことはありますか?

私はすごく好奇心が旺盛で、自転車を始めて、MCの仕事して、アパレル始めたと思ったらショップ作りも手伝ったりと、いろんなことをやっているので、また違うことをやりたいと思って始めるかもしれません。でも今はショップを盛り上げて、ゆくゆくの目標はロードバイク女子を増やしたいですね。世の中の女性にもっとスポーツバイクを知っていただいて、綺麗に健康に自転車を楽しんでほしいというのを目標にいろいろなことをやっていこうと思っています。

――ロードバイクに乗る女性も少しずつ増えてきてますよね。

増えてきたんですよ。女性の方って、結婚や出産などの転機をきっかけに出来なくなることが多いんですよね。でも子育て世代のママさんにちょっとストレス発散に乗ってもらったり、子育てが落ち着いてこれからがっつりスポーツしようという人に乗ってもらったり、いろんな女性に対応できるような仕組みを作っていきたいです。

――何か考えていることはあるんですか?

私にも中学生の娘がいるので、ファミリーで楽しめるといいなとは思っています。小さい子どもにはキックバイク乗ってもらったり、小学生くらいなら小さいロードバイクに乗ってもらってファミリーでサイクルイベントができたらいいなとか。最近はEバイクも流行っているので、がっつり乗れるお父さんはロードバイク、体力に自信のないお母さんはEバイク、お子さんにはキッズバイクを用意してもいいですし、自転車の遊び方って本当に幅広いってことを皆さんにお伝したいです。

――新しいイベントをやるときにはぜひ教えてください。

ショップがあれば、そこを拠点にお客様の生の声が聞けるので反映できるかなと考えています。今までは直接、お客様に接客できることがなかったので、まだオープン間もないですが、ほんまにいいなって思ったんです。試着してもらって「可愛い」っていってくれるお客様の笑顔を見るとめちゃくちゃ嬉しいし、自分で企画しているのでアドバイスもお客様のスタイルを見て提案できるので、ショップの良さをふつふつと実感しています。

――新しいアイディアも浮かんでいるんですか?

そうですね、でもやっぱり人それぞれですね。乗り方も観光メインのサイクリングで汗もかきたくなしウェアもゆったり着たい人もいれば、がっつり100kmでも200kmでも走りたいから空気抵抗を減らしたウェアがいい人もいて。全員の声に応えられるのかっていうと難しくはあるんですけど、その課題になんとか折り合いをつけていいウェアやショップが作れたらいいなと思っています。

――やりたいことが毎日あって大忙しですね。

そうなんですよ。考えが止まらなくて夜はぐっすり眠れてます(笑)。でもこれからがとても楽しみです。