シクロクロスが全国で盛り上がっている。ウィンタースポーツの一つとして、冬季のトレーニングとして、密を避けるスポーツとして。コロナ禍によりイベント開催のハードルが上がる中、それでも熱い要望によって今年も「関西シクロクロス」は開催中だ。関西でも歴史のあるこのシクロクロスイベントのプロモーター 矢野淳さんにお話を伺った。

「オリンピックとか、あんなおっきい大会もできなくなっている中でなんですけど、どうせ努力すんねやったら、やれることを一生懸命やろうって。規模がちっちゃくなったりとか、制約がいろいろできたとしても、続けることを努力しようってことにみんなでなりまして」

C1クラスでは、毎年、熱い戦いが繰り広げられる

――25年の歴史がある関西シクロクロスにもコロナ禍の影響は小さくなく、開催までにはたくさんのハードルがあったようだ。

毎年7月の初めくらいにその年の運営をどうするのかのミーティングをしています。それが今年の7月の最初の頃ってちょうど第二波がわーっと来てた頃だったんです。いやー、これほんとにこのままやれんのやろかって非常に心配していました。イベントを開催するには地域の協力も必要なので、主催者がやりたいと思っても地元にあかんって言われたら、やっぱりそれを無理やり押し切るわけにもいかないですからね。僕たちはやるにあたって全部の会場の市町村さんに電話で聞いたんです。関西の方は割とね、前向きと言う言葉は適切じゃないかもしれないけど、感染症対策だけしっかりやらはんのやったら、気をつけてやってもらったら、やるなって言うことはないですよって、どこの地域も大丈夫ですよって言ってくださったんで、なんとか開催にこぎつけて、続けることができました。

――開催にあたり、コロナ対策はしっかりと行っている。

一番大きいのは参加定員に制限をかけて減らしたことです。スタッフの数も絞り、全体に規模を縮小しています。関西シクロクロスの楽しいところが、僕らのモットーでもあるんですけど、安くて美味しいファミレスシクロクロスっていうので(笑)結構ファミリー層っていうのかな、参加者がお父ちゃんもお母ちゃんも子どもたちもみんなで来てもらって、みんなレースに出てもらってっていう感じがあるんですよ。でも今年は応援をなるべく控えてくださいとか、終わったらすぐ帰ってくださいとか、参加する人を絞るようにしました。いつもはお店が出て、家族連れでみんなが最後までワイワイワイワイやっているような雰囲気があるんですけど、今年はそれがなくてちょっと寂しいかなっていう感じになっています。

スタッフのマスク着用など、感染対策はしっかりとされている

――規模を縮小しながらも、今年も開催する理由は毎年楽しみにしている参加者からの熱い要望からだ。

今年は開幕戦の紀の川のエントリーで570人くらい。コロナの影響でもうちょっと減るかなと思っていたんですけど、意外と減っていませんでした。去年同じように開幕戦を紀の川でやったんですけど、それが630人くらいでした。ただエントリーしたけど色々な事情で来られなかった方もいて、実際に来たのが去年は570人くらい。でも今年はね、こんな状況でも申し込んでいるからか、参加を取りやめた人がほとんどいなくて、走っている人数って去年と変わらなかったですね。

泥だらけになりながら、アップダウンの激しいコースに挑む

25年前、一番最初のレースは参加者が100人だった。それから右肩上がりで25年間、参加者数が下がったことはほぼない。世界で活躍する有名選手も輩出している「関西シクロクロス」を立ち上げたきっかけは何だったのか。

――矢野さんがシクロクロスに出会ったきっかけを教えてください。

もう何十年も前の話になるんですけど、中学生の時にみたサイクルスポーツっていう自転車雑誌の記事がきっかけでした。森幸春さんが神奈川県の湘南で、山とか湖にシクロクロスの自転車で走りに行ってる記事が載っていて、それがすごく面白そうだなと思って。僕はその頃、京都市内の北のほうに住んでいたんですけど、北山の峠って、林道みたいなところがあって、僕はその辺りをサイクリングするのが好きやったんで、その記事を見てすごく興味を持ちました。それから高校に進学して、自転車競技を始めた頃に、ちょうどシクロクロスブームがあって、パナレーサーさんでシクロクロス用のチューブラタイヤを発売しはったんですよ。それを冬になったらロードバイクにつけて、中学生の時に走っていた林道に走りに行ったのが出会いです。

――その後、実際にレースの運営を始めたのは25年前。

日本国内のシクロクロスは、藤森信行さんという方が、ヨーロッパに留学された際にみたレースを日本に持ち帰って、長野県で始められたのが最初です。(シクロクロスミーティング)その頃は、僕もロードレースを学連とか実業団とかで走っていたんですけど、引退した後もレースに出たいなと思っていて、見つけたのがシクロクロスミーティングでした。今もシクロクロスミーティングって日本国内のすごいレースですが、その当時からカッコよかったし、面白かったんで、わざわざ京都から参加していました。その頃は、スキーが流行っててね、みんな車の屋根にスキー積んでるのに、僕らだけ自転車積んで信州行ってシクロクロスミーティングに参加してたんです。(笑)でも毎週、慣れない雪の中を遠くまでドライブするんも大変なんで、それやったら関西でやったらどうやろって思いだして、藤森さんに来ていただいて、いくつかコースを一緒に回ってもらって、始めたのが25年前です。

――大会を自分たちで始めようと思うのが、すごいですね。

元々、京都の自転車競技連盟でトラックレースとかロードレースをやっていたんで、その延長で秋冬はこれやろうって感じですね。僕と、熊本さんっていう方の2人でやろうって感じかな。2人とも30代くらいで若かったので勢いもあって、気付いたら始めていました。

――しかし、立ち上げにはかなりの苦労もあったようだ。

最初にやる時ってお金かかるじゃないですか、立ち上げの。鉄杭を、ほんまは鉄はルール違反なんですけど、昔は何も分かれへんかったから、近所の鉄工所に頼んで、100本作ってもらったりとか、いろいろ機材揃えるじゃないですか。その費用を熊本さんと僕で10万円ずつ出して、参加料収入で回収していくんですけど、「この10万が返って欲しいと思ったら一生懸命、選手集めてやろうね」って。もし誰も来なかったら、この10万はパアになってしまうんで(笑)でも消えなかったです。ちゃんと返ってきました。

――会場探しも簡単ではなかった。

最初の1995年は、6レースやりました。でもその頃はシクロクロスって言っても全然知られてないので、会場を探すのが物凄い大変やったんですよ。運動公園とか、いろんなところを回って、10~20カ所行って、ようやく1カ所OKが出るかっていうくらいで。でも熊本さんには先見の明があるんですけど、やるんやったら年に1回とかでは絶対に定着しないから、たくさんレースやって、毎週あるくらいやったら、その地域で定着するって言っていて。とりあえずたくさんやろうってことで、なんとか6カ所見つけて始めたという感じです。
年に1回だけやったらいくら面白くても、その地域で選手って育たないですからね。だからとりあえず6レースで始めたんですけど、いつの間にかちょっとずつ増えて今は年に12レースになっています。

――ずっと来られている方っていらっしゃるんですよね。

そうそう、第一回目からかな、きてくれている方もいますね。ほぼ欠かさずに。

――小さい頃から始められて有名になる方もいらっしゃいますよね。

プロで全日本チャンピオンになった竹之内悠くんとか、沢田時くんとか、今ガールズ競輪にいる坂口聖香さんとか豊岡英子さんとかね。それこそファミレスなんで子どものレースも大人のレースもやってますし、キッズで走ってた子がいつの間にかエリートで走ってます。20何年もやってればね。中にはもうちょっと上のクラスだけに絞ってやったらみたいな声もあるんですけど…。年齢層を幅広くやっているのは子供たちがそこですごい選手を見るじゃないですか、私たちもああいう風になれたらと思ってくれたら良いんで、あの会場の中に全部詰め込んでしまうんですよ。

プロモーターの矢野淳さん。関西シクロクロスは開放的な会場で行われる

会場内では、C1クラスで激しいレースが繰り広げられる中、河原では幼い兄弟で競い合っていたり、自然いっぱいの環境で自転車そっちのけで遊ぶ子供など、微笑ましい光景もそこかしこで見られた。このファミリー感が関西シクロクロスの軸の一つだと感じた。

――関西シクロクロスは、今シーズンも中盤を迎える。いつもとは違った形の運営を行う中で、今の想いを伺った。

何よりも始まったからには、無事で最後まで事故なくやるっていうのが一番大事かなと思います。定員はこのままいくのかな、少しだけ増やしたい気もするけど難しいかなというのはありますね。
大会は毎年やるんで、いつもなにか新しいチャレンジはしたいなと思っています。新しい会場の開拓であったり、新しいやり方を考えたり。毎年、新しい参加者も増えていますし、新しいスタッフのメンバーも増えています。関西シクロクロスの一つの特徴は、主管チームがあることです。審判は近畿の自転車競技連盟が中心にやってますけど、それだけでは運営できなくて、コースの設営とか、駐車場の整理とか、人手がいるんですよね。それを主管チームと言って会場ごとに2チームくらい参加しているクラブチームに協力してもらっています。それは25年前の始めた時からお願いしていて、12回のうちの1回か2回ずつくらい、今日はうちのチームが手伝おうか、ということで入ってもらっています。草野球とか、自分らが試合ない時は他のチームで審判やったりとかしますよね、ああゆう感覚で運営をしようかなというのがあって、いろんなチームの方が関わってくださっています。僕自身も関西シクロクロスやってて、何が一番楽しいって、いろんな人とつながりができることかもしれないです。

――最後に、関西シクロクロスで勝つための秘訣を教えてもらった。

どうでしょうね。僕も自分自身がレースから遠ざかっているので。でも基本はやっぱり、ロードでしっかり早く走れることが大事だと思います。自転車競技なので自転車で早く走れるっていうのは、僕は基本はロードやと思いますね。その上で、シクロクロス独特の技術が必要です。シクロクロスは技術に左右される部分も大きいです。ロードは、ツール・ド・フランスとかのすごいレースを見ていても、3分とか5分空いてもがっと追いつけるんですけど、シクロクロスは10秒開いたら、なかなか縮まりません。だから、例えば、障害物超えるのに自転車から飛び降りて、飛び乗ってまた走り出す時に、AさんとBさんで2秒違うとしますよね。その度に2秒遅かったとするじゃないですか、10周したら20秒違うわけですよ。20秒だとしたらもうそれだけで勝負が決まるみたいな。だから早く走るのもありますし、ミスをしないように着実に一番最短で早く走るっていう技術を磨くのもシクロクロスの勝負所になりますね。目の前に見えるからと言って、必死で踏んだら追いつくというのはなかなか難しいです。数秒さが命取りになるので、かなりシビアですね。

その上で、シクロクロスはスタートが一番大事です。最短で走る、1秒2秒をロスしないためのラインって1本か2本しかないじゃないですか、1人しか走れないわけですよね。だから、スタートの地点でできるだけ前に出て、そのラインをキープするのが肝心です。
あとは、最初から思いっきりフル回転しないといけないので、ウォーミングアップもしっかりする必要があります。それから集中力ですね。ミスしないように集中して、難しいところもロスしないように最短のところを狙って、ずっと考えて考えて走らないと。結構頭使うのかもしれないですね。レースも長いので、集中力保つのも大変やし、ペース配分を考えるのも大変かもしれないです。

25年間、ほぼ中止することなく続いているのは、矢野さんの人柄に集まるチームワークだと感じた。ロードレースとは違った面白さのあるシクロクロス。今まさにシーズンを迎えており、興味のある方は是非、参加してみていただきたい。

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