私は市役所の職員として、長年ゴミ屋敷問題に関わってきました。ゴミ屋敷問題は、単にゴミを片付ければ済むという問題ではありません。住人の抱える様々な問題、近隣住民との関係、行政としての立場など、多くの要素が複雑に絡み合っています。今回は、私が実際に経験したゴミ屋敷対応の苦悩と、そこから得られるやりがいについてお話しします。ゴミ屋敷対応で最も苦労するのは、住人とのコミュニケーションです。ゴミ屋敷の住人は、精神的な問題を抱えている場合や、経済的に困窮している場合、地域から孤立している場合など、様々な背景を持っています。そのため、単純にゴミを片付けるように説得しても、なかなか理解してもらえないことがあります。私たちは、まず住人の話に耳を傾け、信頼関係を築くことから始めます。時間をかけて、住人の状況や気持ちを理解し、寄り添う姿勢を示すことが大切です。しかし、中には、全く話を聞いてくれない住人や、暴言を吐く住人もいます。そのような場合は、精神的な負担が大きく、心が折れそうになることもあります。また、近隣住民との関係も難しい問題です。近隣住民は、ゴミ屋敷から発生する悪臭や害虫、景観の悪化などに悩まされています。そのため、市役所に対して、早期の解決を求める声が寄せられます。しかし、市役所としては、住人の権利を守りながら、慎重に対応する必要があるため、板挟みになることがあります。しかし、苦労ばかりではありません。ゴミ屋敷が片付き、住人の生活環境が改善され、近隣住民から感謝の言葉をいただいた時は、大きなやりがいを感じます。また、ゴミ屋敷問題を解決することで、地域全体の環境が改善され、住みやすい街づくりに貢献できることも、私たちのモチベーションにつながっています。ゴミ屋敷問題は、私たち市役所職員だけでは解決できません。福祉機関、医療機関、専門業者、地域住民など、様々な関係者の協力が必要です。これからも、関係機関と連携しながら、ゴミ屋敷問題の解決に向けて、全力で取り組んでいきたいと思います。