春から夏にかけて、庭の木やフェンス、さらには物置の隅などにアシナガバチの巣を見つけることがあります。ハチと聞くと「危険」「駆除しなければ」と思いがちですが、実はアシナガバチは人にとって有益な存在でもあります。では、なぜ庭に巣を作るのか、そして私たちは彼らと共生できるのでしょうか?アシナガバチが巣を作る場所にはいくつかの特徴があります。まず、風雨をしのげる場所であること。庭の樹木の枝先や軒下、フェンスの裏側など、外敵から身を守りやすく、適度な陽当たりがある場所は、巣作りに適した環境です。さらに、近くにエサとなる昆虫が豊富にいることも重要なポイントになります。庭の植木や花壇にはアブラムシや毛虫が多く、アシナガバチにとっては格好の食料庫となるのです。実は、アシナガバチはとても優れた害虫ハンターです。アブラムシ、イモムシ、毛虫などを捕食し、幼虫に与えます。つまり、彼らが庭にいることで、農薬を使わずに自然な害虫駆除ができるのです。特に家庭菜園をしている方にとっては、アシナガバチは頼もしい存在といえます。しかし、人間の生活圏に近すぎる巣は、やはりリスクも伴います。巣に誤って近づいてしまったり、庭作業中に刺激を与えたりすると、防衛本能が働いて刺されることもあります。もし巣が人の動線上にある場合や、頻繁に利用する場所にできた場合は、安全を考えて駆除するのが賢明でしょう。逆に、庭の奥や物置の陰など、人と接触しない場所であれば、無理に駆除せず、アシナガバチの生態を観察しながら共生するのも一つの選択肢です。巣をそのままにしておく場合は、ハチが活動する時期(春〜秋)には距離を保ち、庭作業の際は黒い服を避け、できるだけゆっくりとした動作を心がけると、ハチを刺激せずに済みます。また、巣がある場所を家族にも共有し、注意を促しておくことも大切です。アシナガバチは私たちにとって害になることもありますが、同時に自然界のバランスを保つ重要な役割を担っています。無闇に駆除せず、環境や状況を考えながら対応することで、人とハチが上手に共存できる可能性もあるのです。